睡眠欲と読書欲の狭間で

ライトノベルの感想なんかを書いてます

ラン・オーバー 感想

主人公と転校生ヒロインと原君の三人が力を合わせていじめっ子に戦いを挑む、ちょっぴり過激な学園バトルラブコメ
主人公は、ヒロインにひょんなことから弱みを握られる。ラノベではお約束とも言える両親のいないマンションの一室で、何故か同棲生活がスタート!?
最初は渋々ヒロインに付き合っていた主人公だったが……?
夏祭りイベントや体育倉庫でのちょっぴりHなサービスシーンもあるよ!


面白かった。
ストーリーに期待して買ったんだけど、ちゃんとボーイ・ミーツ・ガールだったし、恋愛ものとしてもよく出来てると思った。
この主人公みたいに振る舞えたら、人生楽しいだろうなって思う。
復讐要素もあるんだけど、メインテーマではない。
ヒロインは不思議ちゃんというか、心に闇を抱えてるようなヒロイン。
ブコメラノベをたくさん読んだ人にお勧めの作品。

ラン・オーバー 表紙画像


ネタバレあり

 田辺
ヒロインの湊が田辺の手の甲にフォークを突き立てるシーンはスカッとした。
その翌日には、手に包帯を巻いて普通に登校している田辺にも驚かされたけど……でも、さっそく報復しようとしているその根性は大したもの。

クライマックスでの田辺の行動にはすごいハラハラさせられたし、エロかった。個人的には、湊は母性を感じて好きだけど、エロに関しては田辺の方が優秀だと思う。
どちらかと結婚しなくちゃいけないなら湊だし、愛人にしなくちゃいけないなら田辺かな。湊が愛人とか間違いなく殺されそうだし。


主人公が最後に原のことを哀れだと思うシーンが印象的。
結局、いじめは反撃できない奴がターゲットになるんだよね。
主人公によると、最初は原ではなくて柴田がいじめのターゲットになると考えていたけど、柴田はちゃんと仕返し(パソコンを壊した奴の親に弁償させる)したからきっとターゲットから外れたんだろう。

クラスでは否定されいじめられ、復讐のためにいじめられない様に自分を変えたら、今度は社会から否定され矯正される。
復讐していた頃の原は、主人公にやらされていた感はあるけど、自分の意思というのも感じられた。
正しいか正しくないかは別として、楽しそうではあったしね。

原が女ならもっとラノベっぽくなってた気がする。もしそうなら、湊より人気が出てた可能性すらある。
ただ、最近のラノベは女性の登場人物が多すぎるので、このくらいの男女差でちょうどいいのかもしれない。


途中まではつかみどころのないヒロインだし、かわいいけど……って程度のキャラだった。
でも、最後に湊が主人公のことを裏切るシーンで湊のことが好きになった。
湊が裏切ってなかったら、そこまで好きじゃなかったかもしれない。
むしろ最後の抱きしめるシーンで刺されていたとしても許してた。

主人公が奏のことを「負い目をかけらも感じなくなるくらい酷いやつ」と告白する。
主人公が奏でのことを好きになるのも分かる気がする

ラノベのヒロインは「いい子」が多すぎるんだよね。もっと湊みたいな「屑ヒロイン」がいてもいい。屑主人公はたまに見るけど、屑ヒロインはあまり見ない。
いい子にはいい子の魅力があるし、屑には屑の魅力があると思う。
いや、屑には魅力がないから屑なんだけど、そのクズっぷりが保護欲を掻き立てられるというか、たまに見せる優しさのギャップに萌えるというか、そのクズさも含めてかわいいというか……

完璧美少女ヒロインとか普通のヒロインって基本的に性格いいから、劣等感というかこんな自分と釣り合わないから申し訳ないって思ってしまう。
完璧美少女ヒロインと一緒に地獄の底まで落ちていくというのも、ある意味魅力的ではあるけれど……


主人公の行いがばれて、石原達が仕返しにくるシーン。
ヒステリー女である石原ばかりが頑張ってるのを見かねて、主人公が取り巻きに「女ばっかりにやらせて申し訳ないと思わないのか?本当に(自分を)殺す気あるのか?」と煽る。
想像したらかなりシュールな絵だけど、主人公のことをちょっとかっこいいと思ってしまった。


個人的には、6章はいらなかった。エピローグは読者の想像にお任せしますって形でもよかったと思う。まぁ、終わり方は賛否分かれやすいので難しいとは思う。こういう作品だと特に。
ストーリーも刺激的だったけど、あまり見ないタイプのメインヒロインが印象的な作品だった。こういう挑戦的なラノベはもっと出てくるべき。
この作者が新しい作品出すなら是非読みたい。